最新の陰イオンクロマトグラフィーシステムは、高速かつ正確に陰イオンを分析します。システムは、以下の主要コンポーネントで構成されます。
オートサンプラー:オートサンプラーは、サンプルのローディングとリンスをサンプル間で自動的に実施して、信頼性と再現性の高い結果を得られるよう設計されています。オートサンプラーには、クロマトグラフィーアプリケーション用に一連のリキッドハンドリングステップがプログラムされているため、使いやすく、高いコスト効率を達成します。
オートサンプラーにより、サンプルをイオンクロマトグラフィーシステムに導入してサンプル分析を実施し、オンライン pH モニタリング、オンライン導電率測定、自動希釈、さらには標準曲線のオンライン生成までが可能です。以上の機能には、多くの利点があります。たとえば、注入前に導電率または pH の許容範囲を外れたサンプルがあれば、カラムに過負荷を与える可能性があるため、自動希釈ステップが自動的に起動します。これにより、カラムのファウリングを防ぎ、試薬の無駄を減らし、質の劣る使えないデータを排除します。
ポンプ:サンプルをカラムに流すためには、高品質のクロマトグラフィーポンプが不可欠です。その他の種類のポンプ(シングルピストンまたはデュアルピストン)は、アイソクラティックおよびグラジエント溶出手順の両方に利用できます。イオンクロマトグラフィーポンプはさまざまな流量を設定でき、PEEK などのメタルフリー材料を採用して、金属汚染を排除します。金属汚染は、カラムの詰まり、サプレッサー性能への干渉、電気化学検出器のファウルの原因となるおそれがあります。
溶離液:最新の IC 技術は、自動的に溶離液を生成するオプション(溶離液生成)を提供するため、手作業での溶離液調製によるエラーやばらつきを低減します。陰イオンクロマトグラフィーでは、水酸化物と炭酸塩の 2 種類の溶離液が広く利用されていますが、溶離液ジェネレーターカートリッジを利用して簡単に生成できます。溶離液電解生成の開発により、システムに水を加えるだけで、溶離液が自動かつオンラインで生成されます。濃縮溶液を溶離液の希釈に使用すると、大気中の二酸化炭素を吸収するため、効率が落ち、問題が発生します。二酸化炭素によりクロマトグラフィー結果が劣化し、常にオンラインで希釈した水酸化物溶離液となります。実際の溶離液生成は、希釈ではなく、オンラインで電解的に生成します。
カラム:カラムは、IC 分析の中核部分になります。陰イオン分析には、炭酸塩に最適化されたカラムと水酸化物カラムの 2 種類の IC カラムがあります。炭酸塩に最適化されたカラムは、炭酸塩、または炭酸塩/重炭酸塩溶離液を使って、シンプルなマトリクスの陰イオンをアイソクラティック分離するのに適しています。水酸化物に選択的なカラムは、水酸化物溶離液を使ったアイソクラティック分離とグラジエント分離の両方に適しており、通常炭酸塩に最適化されたカラムに比べて高い感度を発揮します。
カラム技術の進化によって、異なる化学特性を持つ樹脂を使った多様な陰イオン交換カラムが生まれました。異なる化学特性を持つカラムを、それぞれの分析種に合わせて選択できます。分離用のカラムを選択するには、以下のパラメーターを考慮します。
- 容量:高容量カラムは、マトリクス中の陰イオンを効率よく除去して、微量の分析対象陰イオンに対する、イオン強度の高いマトリクス中の陰イオンによる干渉を防ぐため、サンプル調製が不要になります。高容量カラムは、マトリクス対分析対象イオンの比率が高い場合に好適ですが、分析時間がかかるため、スループットが落ちます。シンプルなサンプルは、低容量カラムを使うと迅速に分離できます。
- 内径:マイクロボアカラム(1 ~ 2 mm)やキャピラリーカラム(1 mm 未満)などの内径の小さいカラムは、ピークが立つという利点があり、これは少量のサンプルしか入手できない場合に重要な要素です。さらに小径カラムは、スタンダードボアカラムに比べて溶離液の消費量を抑えます。
- 粒子径:従来、IC カラムには粒子径が 7 ~9 µm の樹脂が使われてきました。しかし、最近 4 µm の粒子が開発され、分離の利点が高まりました。高圧イオンクロマトグラフィーシステムが利用できる場合、樹脂の粒子径が小さいほど分離効率が上がるため、短いカラムを使うことができ、大径粒子に比べて分析時間を短縮することができます。
サプレッサー:1975 年に発売されたサプレッサーは、IC 分析でバックグラウンドの導電率を下げて、分析種の導電率を高めるという利点があります。 溶離液、分析種、マトリクス濃度に応じて、最適のサプレッサーを選択してください。また、有機溶媒を使用するか否かでも、好適なサプレッサーは異なります。電解再生サプレッサーを使用すると、サプレッサーの再生に必要な試薬の調製や供給が不要になります。旧式のサプレッサーでは有毒な試薬が必要でしたが、電解サプレッサーはプラグアンドプレイ方式のシンプルな装置です。
検出器: 従来の UV 検出器は、イオン交換クロマトグラフィーにより分離された分析対象のほとんどに発色団がないため、一般に陰イオン分析に不向きでした。現在では、陰イオン分析には主にサプレッサー付電気伝導度検出器を採用しており、先に説明したサプレッサーの利点が生かされています。紫外可視光検出を用いたポストカラム誘導体化にサプレッサー付電気伝導度検出器を組み合わせると、検出限界をさらに引き下げることができます。ポストカラム誘導体化は、臭化物やクロムなどの微量の汚染物質陰イオン分析に使用されています。
試薬フリーのイオンクロマトグラフィー(RFIC)および高圧イオンクロマトグラフィーを使うと、10 ~ 30 分でさらに微量な陰イオンを正確に測定できます。個別のニーズに応じて、RFIC や高圧システムなどの各種測定装置を選択して、感度を損なわずに高速処理能力を実現できます。