図1.フローサイトメトリーによる活性酸素種(ROS)の検出。(A) TBHP処理したJurkat細胞において、CellROX Deep Red Reagentで検出されるROSレベルは、NACによる培養細胞の前処理により低下した。酸化剤TBHPで処理した細胞(赤色)は、NAC前処理を行った細胞(青色)およびコントロール細胞(緑色)に比べ、CellROX Deep Red Reagentによる染色が増加した。(B, C) CellROX Deep Red ReagentはSYTOX® Blue Dead Cell Stainとの併用が可能で、ストレスを受けた生細胞を死細胞から識別可能。Jurkat細胞をPBS(B) または200 μM TBHP (C)で30分間処理した後、CellROX Deep Red Flow Cytometry Assay Kitで標識した。コントロール細胞(B)で見られた基底レベルのROSに比べ、処理を行った細胞(C)では、酸化ストレスを受けている細胞の割合が高い。
3種類のMolecular Probes™蛍光試薬—CellROX™ Deep Red、CellROX™ GreenおよびCellROX™ Orange — は、生細胞における活性酸素種(ROS)の検出および定量を行うために開発されました。 各試薬とも細胞浸透性であり、還元状態では非蛍光性もしくは非常に弱い蛍光を発します。酸化されると、これらの試薬は強い蛍光を発し、細胞内に留まります。
これらのROS検出試薬は、フローサイトメトリー、顕微鏡、ハイコンテンツ イメージングや蛍光プレートリーダーなどさまざまなプラットフォームに適合するだけでなく、Invitrogen™ Attune™ Flow CytometerおよびInvitrogen™ EVOS™ Imaging Systemにも対応しています。
CellROX試薬 は従来のジヒドロジクロロフルオレセイン色素(例えばH2DCFDA)に比べ、以下の顕著なメリットがあります:
- 蛍光性プローブ—CellROX 試薬は細胞内で酸化されると明るい蛍光を発し、高感度な検出を可能に
- マルチカラー適合性—他のレーザーで励起されるフルオロフォアとのオーバーラップがわずかで、他の試薬とのマルチプレックス解析が容易/font>
- シンプル—完全培地または他の適切なバッファー中で細胞を染色でき、無血清培地が不要
- 固定可能—CellROX Green およびCellROX Deep Red試薬は、ホルムアルデヒド固定後もシグナルが保持されます(CellROX Orange試薬は固定処理に不適合)
- フレキシブル—3色の異なる蛍光色を発する試薬があり、実験のデザインがより簡便
これらの試薬の特性比較は表 1でご覧いただけます。その他のROS検出試薬については 酸化ストレス関連製品選択ガイドをご覧ください。
表1蛍光性酸化ストレス検出薬の特性
試薬 | H2DCFDA | DHE | |||
---|---|---|---|---|---|
最大Ex/Em (nm)* | 485/520 | 545/565 | 644/665 | 504/529 | 518/605 |
完全 培地への添加 | 可 | 可 | 可 | 不可 | 可 |
アルデヒド固定可能 | 可 | 不可 | 可 | 不可 | 不可 |
界面活性剤耐性 | 可 | 不可 | 不可 | 不可 | 不可 |
光安定性 | ++ | ++++ | +++ | + | NA |
マルチプレックス適合性 | 可 | 可 | 可 | 可 | 不可† |
GFP適合性 | 不可 | 可 | 可 | 不可 | 不可 |
RFP適合性 | 可 | 不可 | 可 | 可 | 不可 |
*酸化された試薬の最大励起波長および最大蛍光波長(単位nm)、いくつかはdsDNA結合状態の数値です。†DNAに結合した酸化DHEの蛍光発光スペクトルは非常に広く、他の蛍光プローブとのマルチプレックスは困難です。H2DCFDA = 2′,7′-ジクロロジヒドロフルオレセインジアセタート。DHE = ジヒドロエチジウム。NA = 該当データなし。 |
単品の試薬に加え、以下の試薬を含むフローサイトメトリー用バリデーション済みキットを開発しました:
- 抗酸化剤(N-アセチルシステイン [NAC]、ネガティブコントロール用)
- 酸化剤(tert-ブチルヒドロペルオキシド[TBHP]、ポジティブコントロール用)
- CellROX 試薬に適合するSYTOX® dead cell stain
CellROX試薬をSYTOX® Red Dead Cell Stainと(または SYTOX® Blue Dead Cell StainをCellROX Deep Red Reagentと)フローサイトメトリーで併用すると、酸化ストレスを受けた細胞と非ストレス細胞を、死細胞と正確に区別できます。
全3種類のCellROX 試薬は、明るく光安定性の蛍光を安定的に発し、従来型の顕微鏡(図 2)およびハイコンテンツイメージング(図 3)で検出を行い、細胞内酸化ストレスを効率的にイメージングおよび定量することができます。細胞をN-アセチルシステインで前処理するとシグナルが低下することから示されるように、これらの試薬が発するシグナルは活性酸素種を特異的に検出していると考えられます(図 2)。
図 2.蛍光顕微鏡によるROSの検出
ヒト大動脈平滑筋(HASM)細胞を35 mmガラスボトムディッシュ(MatTek)に播種し、コントロールとして未処理のまま、または 500 nM アンギオテンシン IIで37°Cにて4 時間処理を行った。Hoechst® 33342とCellROX Green 試薬 (上列)またはCellROX Orange 試薬(下列)をインキュベーション終了30分前に添加した。細胞をPBSで3 回洗浄した後、Zeiss® Axiovert倒立顕微鏡で40×対物レンズを使用して画像を取得。アンギオテンシン II処理によって、CellROXシグナルの増加が見られ、処理を行った細胞では酸化ストレスが増加していることが示された。
図 3.ハイコンテンツイメージングによるROSの検出
ウシ肺動脈内皮(BPAE)細胞を96ウェルプレートに播種し、未処理のまま、または100 µMメナジオンで37°Cにて1 時間処理を行い、酸化ストレスを誘導した。さらに、コントロール細胞およびメナジオン処理細胞の一部に対し、50 µM N-アセチルシステイン(NAC)をROSスカベンジャーとして加えた。その後、完全培地中にて5 µM CellROX Green 試薬 および Hoechst® 33342 により37°C30 分間細胞を染色し、PBSで洗浄後, Thermo Scientific Cellomics® ArrayScan® VTIで画像を取得した。 NAC 存在下で蛍光が減少していることから、CellROX Greenのシグナルはサンプル中に 存在するROSによるものだと確認できた。