現代の材料科学の研究は、従来的な金属やコーティングされた試料などといった枠組みを超えた領域にまで進んでいます。今日求められているのは、より複雑で難易度の高い材料に関するマイクロおよびナノスケールでの情報であり、その対象となるのは非導電性であったり、汚染物や水分を多く含んだり、高い反応性を有したり、ガスを放出したりする物質です。
電子顕微鏡(EM)は長期にわたり材料構造解析のベンチマーク的存在でしたが、その用途は真空下で安定している試料に限定されていました。この条件は通常、材料本来の使用環境を表すものではなく、材料の特性や動作の理解が制限されている可能性があります。そのため、真に意味のある観察を行うために必要なのは、さまざまな実験条件や環境下で実施できる高分解能のイメージングと分析です。試料作製時の処理も最小限にして、材料の本来の状態を保持するのが理想的です。
環境制御型走査電子顕微鏡(ESEM)は、従来的なSEMの限界を超えて、試料のタイプを問うことなく、より深い洞察を可能にします。ESEMによるイメージングでは、試料作製時の処理、水分添加や熱サイクリングなどの変数の追加、あるいはガス導入を最小限にして、in situでの動的変化の特性評価を行えます。水蒸気や温度制御ステージの登場により、これまで“画像化不可能な試料”とされていた、汚染物を多く含む(ガス放出が激しい)試料や水和状態が定常状態である試料(乾燥すると性質が変化する)などの特性評価も簡単に行えるようになっています。
環境制御型走査電子顕微鏡
試料の水和状態の完全な制御は、材料および生命分野の研究者による、溶液中にある材料の相互作用のリアルタイム観察を可能にしており、これは湿度による材料の変化や、水分と試料表面の相互作用についても同様です。これは研究可能な領域の、静的な単なる観測から、動的なin situでの実験への移行をもたらします。
ESEMは、柔軟性と操作性に優れたプラットフォームで実行でき、分解能を犠牲にすることはありません。これらは高度な多用途性を備えた高分解能SEMであり、イメージングと分析の総合的なパフォーマンスを環境モードと組み合わせることにより、自然な状態での試料研究を可能にします。