遺伝子発現の解析を行う上で一番はじめのステップは、高品質でインタクトなRNAを得ることであり、これはしばしば最も重要なステップでもあります。 品質の高いRNAを分離するためには、組織を以下のいずれかの方法で処理しなければなりません。 a)採取後直ちに処理する、b)直ちに凍結する、またはc)RNAの完全性を保ったまま保管するため専用の保存溶液中で安定化する。 Life Technologiesでは、サンプルの採取時あるいは採取後にRNAを安定化し、完全性を保つことができるよう特別にデザインされた製品を複数ご用意しております。 RNA安定化のための製品にはRNAlater® Tissue Collection: RNA Stabilization Solution;RNAlater®-ICE Frozen Tissue Transition Solution;およびTHE RNA Storage Solutionがあります。
製品選択ガイド
機能 | 製品 | サンプルタイプ | 説明 |
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RNA安定 化用製品 | RNAlater® Tissue Collection: RNA Stabilization Solution | 細胞および組織 | 水溶性で非毒性の組織保存試薬で、迅速に組織へ浸透し、細胞内のRNAを安定化し保護します |
RNAlater®-ICE Frozen Tissue Transition Solution | 細胞および組織 | 組織を融解する際のRNAの分解を防ぎます | |
THE RNA Storage Solution | 精製済みRNA | クエン酸ナトリウムにより、溶液中の遊離陽イオンをキレート化し、同時にpHを低く保つことにより、塩基の加水分解を最小限に抑えます | |
Tempus® Blood RNA Tube | 血液 | 採血と同時に、血液の溶解と安定化を行うようにデザインされた真空採血管です | |
LeukoLOCK™ Total RNA Isolation System | 血液 | RNAlater®で安定化した白血球から、グロビンフリーなRNAを抽出。 抗凝固剤処理した血液をフィルター分画して白血球のみの状態にした後、保存のためにRNAlater®溶液で安定化します |
革新的な試薬の登場により、RNAを安定に保存するためにサンプルを直ちに凍結する必要性が最小限になります。
いったんRNAlater®溶液が浸透した後は、室温にて組織を取り出し、小分け処理や重量測定を行うことが可能で、RNAlater® 溶液中に戻して引き続き保存することもできます。 RNAlater®溶液で処理し、-80℃で保管した組織は、10回の凍結・融解サイクルにさらされても、その後分離されるRNAの品質に影響はありません(図1)。 RNAlater®溶液中で保存されたサンプルは、冷凍・冷蔵条件で輸送できます。一晩の輸送であれば室温でも可能です。 図2に、RNAlater®溶液中で保存した組織からRNAを抽出し、リボヌクレアーゼプロテクションアッセイを行った結果を示します。
![]() | 図1. RNAlater®処理後、繰り返し凍結・融解を行った組織におけるRNAの安定性。 マウスの心臓および肝臓は解剖されて、RNAlater® 溶液内におかれました。 示されたサイクル回数で、この組織はドライアイス上で凍結され、室温で融解されました。 RNAWIZ™を用いてRNAを抽出した後、1%ホルムアルデヒド/アガロースゲルにて電気泳動を行い、エチジウムブロマイドによる染色、および撮影を行いました。 |
![]() | Figure 2. RNAlater®溶液中で保管したマウス組織を用いたリボヌクレアーゼプロテクションアッセイ 組織は、RNAlater® 溶液中に 4℃ にて 1 あるいは 4 週間保存されました。 RNA 各組織から分離されて、RPA III™ キットを使用して分析されました。 |
RNA安定化サポート資料
テクニカルノート
- Improved Methods for Gene Expression Profiling from Blood Samples―テクニカルノート13(3): 当社では、全血からの遺伝子発現プロファイリングが可能なAmbion®製品を提供しています。これらの製品にはサンプル採取および安定化、血液細胞の分画、RNAの分離、およびグロビンmRNAの除去を行う製品があります。
- Make Time Stand Still with RNAlater®―テクニカルノート10(1): Ambion® RNAlater® Tissue Collection: RNA Stabilization Solutionなら、サンプル採取から数日後、数週間後、あるいは数ヵ月後にRNAの分離を実施することが可能になります。RNAの完全性が損なわれることはありません。
- Obtaining the Highest Quality RNA from Blood Samples―テクニカルノート16(1): このテクニカルノートでは、血液から高品質のRNAを分離する際の注意点および手法について述べています。
- Preserve RNA in the Tissue Before RNA Isolation―テクニカルノート8(2): RNAlater®溶液で保存した組織を組織学的解析に利用したケースもあります。
- RNA Remains Stable During Long-term Tissue Storage―テクニカルノート12(4): RNAlater®溶液でRNAを保存した組織は、組織学的解析に使用したり、急速凍結した後に-80℃で保管することができます… 2.5年後、RNAはどうなったでしょう?
- RNAlater® for RNA and Protein Stabilization―テクニカルノート11(3): RNAlater®溶液で安定化したサンプルからインタクトなタンパク質を回収し、ウェスタンブロッティングや2次元ゲル電気泳動といったアプリケーションに用いることができます。
- RNAlater® Preserves Bacterial Gene Expression Profiles for Array Analysis―テクニカルノート9(5): サンプル処理の間の遺伝子発現の変動を防ぎます。
- RNAlater® Solution Around the World: Stabilizing Expression Profiles ―テクニカルノート14(2): ここでは、マイクロアレイやRT-PCR用サンプルの保存にRNAlater®溶液がどのように使われているか、3つの研究グループの例をご紹介します。
- Thaw Frozen Tissues Without Damaging RNA―テクニカルノート10(2): RNAlater®-ICE solutionはユニークなRNA安定化溶液です。凍結組織をRNAlater®-ICE solutionに入れるだけ! RNA分解を防いで、組織を融解する事ができます。 融解後の組織は、新鮮組織と同様に処理することができます。
ポスター
- RNAlater® Solution Preserves Bacterial Gene Expression Profiles for Array Analysis: RNAlater®溶液はグラム陽性菌およびグラム陰性菌の両者において、RNA発現のプロファイルを速やかに安定化させることを示します。 RNAlater®溶液で処理した菌および処理していない菌からRNAを分離し、Agilent2100バイオアナライザおよびメンブレンフィルターベースのアレイ分析により、RNAの完全性を評価しました。
Tips from the Bench
Your Data
- Your Data: Stabilize Difficult-to-work-with RNA Transcripts: 気管の遺伝子発現に対する喫煙の影響を調べるといった大規模実験において、RNAlater®溶液を使用すれば組織サンプル中のRNAを保存することができます。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.