- 核
- 細胞膜
- F-アクチン ✔ 正解
普段実験をしていても、知っているようで意外と知らない蛍光観察の知識、いろいろありますよね?今回は、そんな蛍光観察にまつわる基礎知識や雑学をクイズにしてみましたが難しかったでしょうか?それとも簡単でしたか?ここでクイズの解答を発表しますので、ぜひ答え合わせしてください!
Q1: タマゴテングダケから単離された分子で、Fアクチンマイクロフィラメントに非常に強固かつ特異的に結合することから、Fアクチンを標識するために使用されるタンパク質は次のうちどれか?
- コンカナバリンA
- ファロイジン ✔ 正解
- ヒドラジド
- バイオサイチン
テクニカルサポートからのひとこと
アクチンは、細胞骨格構造の維持、細胞運動性、細胞の連結、筋肉収縮および細胞シグナリングにおいて様々な役割を果たしており、細胞内で最も存在量の多いタンパク質の一つです。ファロイジンは、Fアクチンマイクロフィラメントに非常に強固かつ特異的に結合し、アクチンに対する他の多くの一次抗体とは異なり、マイクロフィラメント以外の形状のアクチンには結合しません。ファロイジンに蛍光色素をコンジュゲートさせることにより、細胞研究に蛍光顕微鏡を使用する細胞学者にとって非常に有用なツールとなります。
Q2: 細胞生物学における蛍光観察に用いられる波長は通常300~800 nmの範囲です。では、可視光、つまり肉眼で見える波長は次のうちどれか?
- 約400nm~700nm ✔ 正解
- 約800nm~1000nm
- 約100nm~300nm
- 1000nm以上
テクニカルサポートからのひとこと
肉眼で見える光は通常400~700 nmの範囲にあり、虹の全色を含み、400 nm付近の青色に始まり、700 nm付近の赤色で終わります。一般的な蛍光顕微鏡において、発光された光を収集するCCDカメラは、人間の目よりも検出レンジが広いため、可視外の光を使用しても問題にはなりません。
Q3: 蛍光免疫染色にて、細胞を固定する際に最もよく使用されている固定剤は次のうちどれか?
- 冷アルコール
- グルタルアルデヒド
- トリクロロ酢酸
- パラホルムアルデヒド ✔ 正解
テクニカルサポートからのひとこと
パラホルムアルデヒドは タンパク質、ペプチド、酵素のアミノ基と反応し隣接する分子同士を架橋させる働きがあり、最もよく使われている固定剤です。ターゲットによっては、グルタルアルデヒドや冷アルコール固定が行われることもありますが、まずはパラホフムアルデヒドを使用することが多いです。
Q4: 生細胞の核を染色するのに利用できる試薬は次のうちどれか?
- SYTOX® 染色剤
- ヨウ化プロピジウム
- Hoechst染色剤 ✔ 正解
- 7-AAD
テクニカルサポートからのひとこと
SYTOX 染色剤、ヨウ化プロピジウム、7-AAD は死細胞を検出するときに使用する核染色試薬です。C) Hoechst 染色剤、特に、Hoechst 33342が細胞透過性があり、生細胞の核を染色する際に利用されます。
Q5: 細胞骨格またはその他の細胞質内構造の観察が行いやすい細胞は次のうちどれか?
- 上皮由来細胞 ✔ 正解
- RAW264.7細胞
- MMM細胞
- HEK293細胞
テクニカルサポートからのひとこと
RAW264.7 や MMM細胞 (marginal metallophilic macrophage) のような、核と細胞膜 の間の空間が非常に狭い細胞では 細胞骨格などの観察は難しいです。上皮系の細胞は、細胞体が大きく平らな形状のため、比較的細胞構造の観察が容易です。なお、HEK293細胞はトランスフェクションには広く利用されていますが、培養表面への接着が強固でないため、上皮由来細胞と比べると観察が行いにくい場合があります。
Q6: この蛍光染色画像の中で赤く染色されているものは次のうちどれか?
テクニカルサポートからのひとこと
「赤く染色されているもの」は F-アクチン(蛍光標識ファロイジン)です。紫色のようにも見えますが・・・。F-アクチンについての解説はQ1をご覧ください。
Q7: この蛍光染色画像はゼブラフィッシュの組織切片です。この中で、緑色に染色されているものは次のうちのどれか?
- 核 (SYTOX Green) ✔ 正解
- 細胞膜 (蛍光標識Wheat Germ Agglutinin)
- F-アクチン (蛍光標識ファロイジン)
テクニカルサポートからのひとこと
「緑色に染色されているもの」は、核(SYTOX Green) です。SYTOX Greenは、正常な細胞膜を透過せず、dsDNAに結合すると強い蛍光を放つ、鮮やかな固定細胞の核染色試薬です。
Q8: この蛍光染色画像の中で、緑色に染色されているものは次のうちのどれか?
- 微小管
- ミトコンドリア ✔ 正解
- F-アクチン
テクニカルサポートからのひとこと
「緑色に染色されているもの」は、ミトコンドリアです。ミトコンドリアは真核細胞にあり、細胞容積の10%ほどを占めます。ミトコンドリアを調べることで、ミトコンドリアの機能や細胞の代謝および健康状態に対するその影響を調べることができます。
Q9: ある蛍光物質における最大励起波長と最大蛍光波長間の差を何と呼ぶか?(観察に使用する際には、これが大きい蛍光物質のほうが、小さい蛍光物質よりも使いやすい場合がある。)
- ストークスシフト ✔ 正解
- パラダイムシフト
- ピークシフト
- 親指シフト
テクニカルサポートからのひとこと
図を見ていただいた方が分かりやすいので、蛍光と波長の原理をご参照ください。親指シフトをご存知のあなたは、バブル世代 or パソコンフリーク?
Q10: 細胞生物学のツールとしてよく用いられている蛍光タンパク質である緑色蛍光タンパク質(GFP)は次のうちどの生物から発見された?
- Renilla reniformis
- Aequorea victoria ✔ 正解
- Entacmaea quadricolor
- Homo sapiens
テクニカルサポートからのひとこと
それぞれ、主に以下のレポータータンパク質の由来生物となります。
- Renilla reniformis : Luciferase
- Aequorea victoria : GFP
- Entacmaea quadricolor: TurboRFP などのRFP
例えば、Renilla reniformis 由来の緑色蛍光タンパク質も存在するようですが、設問にある発見という意味では Aequorea victoria が正解となります。
Q11: 細胞が健康であり、機能するミトコンドリアではシグナルが明るくなり、ミトコンドリア膜電位が減少するとシグナルが消滅する、ミトコンドリアに蓄積する細胞浸透性の蛍光色素は次のうちどれか?
- CellTracker CMFDA
- Calcein AM
- NBD C6-Ceramide
- テトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM) ✔ 正解
テクニカルサポートからのひとこと
テトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)は、ミトコンドリアの膜電位に応じて蛍光強度が変化します。 アポトーシスを起こすと ミトコンドリアの膜電位が消失していき、それに伴って TMRMの蛍光シグナルも低下することから、アポトーシスマーカーの一つとして利用されることがあります。CellTracker CMFDA, Calcein AM, NBD C6-Ceramide には このような特性はありません。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.